途上国の支援では魚をあげる?魚の釣り方を教える?Cash transfer(現金給付)の可能性

   

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大学院での授業が始まって約1ヶ月が経ちました!授業の内容が全部理解できない、ディスカッションに参加できない、ネイティブの友人の日常会話についていけないなど、毎日泣きそうになりながら何とか頑張っています(笑)

もうちょっと何とかなると思っていましたが、何とかなっていません。留学って大変だ・・・というのを身にしみて感じています。

 

今回は、履修している授業の中で面白いなと思った「Cash Transfer」という援助の仕組みを紹介しつつ考えてみます!

 

Cash Transferって何?の前に

貧困で苦しむ人に魚をあげるのと、魚の釣り方を教えるのはどちらが彼らのためになると思いますか?

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これまで途上国への援助を考えるときに、こんな例えを聞いたことがある方は多いのではないでしょうか?では、今この記事を読んでいただいているあなた、どう思いますか??

 

多くの場合、「魚をあげたとしても、食べるとすぐになくなってしまう(短期的)。魚の釣り方を教えることで彼らはこれからも自分で魚を釣ることができる(長期的)。だから、魚の釣り方を教えてあげた方が彼らの自立を促すことにつながる。」みたいなコメントが返ってくるのではないでしょうか。

私もそう思っていました。

でも本当にそうなんでしょうか??

 

例えば、

「成長期の子どもがいるけど、栄養失調で体がガリガリ。十分なご飯を食べさせたいけどお金がなくてできない」

「子どもを学校に行かせたいけど、学費が払えないor家の仕事の手伝いをしてお金を稼いでもらえないと生活できない」

こういった状況の家庭に対して、「数年以内に安定して収入が入るように支援しますよ」といっても、その支援対象の家庭の人たちはhappyになれるでしょうか?

 

そういった人たちのために行われ始めた支援が「Cash Transfer」で、お金をその人たちに直接あげるという支援の方法です。

 

動画がYou Tubeに色々と上がっていますので紹介します。フィリピンでの例です。

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内容はこんな感じです。

・Cash Transferによってモラダさんの子どもが健康診断を受けられるようになり、学校にも定期的に通えるようになった

・モラダさんの旦那さんも、family development sessionというのを受けて時間管理や予算管理について学ぶ機会を得られている

・Cash Transfer programによって子どもの学校への出席率が大幅に改善され、ヘルスクリニックへの通院者が増加した

・ADB(アジア開発銀行)がフィリピン政府に4億ドルを供与し、50万家庭がお金を受け取ることができた

・家庭だけでなく、コミュニティや国家に対して大きなインパクトがある

 

Cash transferの内容

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授業の参考文献からCash Transferの内容を紹介していきます。

まず、始めの方にこんな風に書いてあります。

Instead of maintaining a huge aid industry to find ways to “help the poor”, it is better to give money to poor people directly so that they can find effective ways to escape from poverty (Hanlon et al., 2010, p.1).

貧しい人たちを助けるために巨大な援助産業を維持する代わりに、貧しい人たちに直接お金を与える方が良い。それによって彼らは貧困から脱出する効果的な方法を見つけることができる。

そして、貧困ラインよりも下の人々の一番大きな問題は現金がないことであり、必要なお金さえあればそのお金を有効に(日々の食事や子どもの教育に対して)使うことができる。モチベーションが低かったり知識がないということではない。

と、書いてあります。

 

実際、ブラジルでは2001年に始まったCash Transfer programによって、貧困にある人々の割合が28%から2008年には19%にまで下がり、子どもの栄養失調率も45%減少したそうです。

 

Cash Transferの結果として

①このプログラムは無理のないものである

②受益者はお金をきちんと遣い、無駄にしない

③現金を与えることは今現在の貧困を直接的に減らすうえで有効な方法である

④将来の貧困を防ぐポテンシャルがある

という4つがあげられています。

 

最初に「お金を直接渡す」って聞いた時は疑わしかったけど、有効な気がしてきませんか?

個人的には、「お金をあげる=汚職や不正につながる」というイメージがありましたが、これは途上国の政府にお金を渡す場合であって、小さなコミュニティや個人に対しては話がまた別みたいです。

また、政府にお金を渡す場合でも、しっかりと監督できれば有効に使われるのだろうなと思いました。

 

気を付けないといけない点

Cash Transferについて議論があるのは、下記の2点です。

①対象者の選定

②条件をどうするか

 

対象者については、「お腹空いてしんどいよ!」っていう状態の人にお金あげたら、その人が喜んでお酒を買いに行くなんてことは想像しづらいです。

でも、最低限の生活に必要なお金がある人が対象者になると、支援の使い道が贅沢品(なくても良いもの)になるかもしれません(ちょっとした贅沢をすることを否定するのでなくて、意図通りに支援が働かないという意味で良くないと書いてます)。

 

条件については、実際に、CCT(Conditional Cash Transfer:条件付き現金給付)と、UCT(Unconditional Cash Transfer:条件なし現金給付)というのがあって、CCTの場合は子どもの学校への出席率や、子どもの健康診断の受診などの、満たさなければいけない条件がついています。

CCTとUCTのどちらが良いのかを決めるのは中々難しそうです。きちんと調べたら研究結果やデータがありそうな気もしますが、これはまた余裕があったら調べてみたいと思います。

 

日本の生活保護もCash Transferだと思いますが、色々問題があったり議論になっているのはこの2点(対象者の選定と条件)がきっちりと運用されていないということな気もします。

 

Cash Transfer in Malawi

マラウイの動画もありました。ConcernというNGOが実施しています。

 

マラウイの大雨洪水被害

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Cash Transferの例とは少し違いますが、青年海外協力隊としてマラウイにいた時、マラウイ南部で大雨が降って村人の家が壊れる、畑の作物や肥料が流される、といった深刻な被害がありました。

しばらくして現状調査をしましたが、壊れた家にそのまま住んでいて、雨風が入ってくるけど布団がない、といった状況の人がたくさんいました。

結局、協力隊の仲間と共に公共施設である保育園(nursery school)の修復支援をしましたが、目の前に苦しんでいるのにボランティア一人では何もできない無力感と、こういう時こそ直接的な支援が必要だと感じました。

実際、JICAやいくつかの国際機関は食物や布団などの物資の緊急援助をしていました。

参考:アフリカ南部を襲った大雨。マラウイの洪水被害と村の様子

 

Criticize

西欧の文化では、criticalな姿勢が求められます。書いてあることに対して、「はいそうですね、100% agreeです。」というのではなくて、反対意見や自分の意見を持つことが求められます。個人的に、Cash Transferは面白いしこれからも広がっていってほしいなと思うものの、課題もあるように思います。個人的な意見を箇条書きします。

・本当に長期的に効果があるのか

・長期に渡って安定した金額を援助する必要があるので、実施できる機関が限られる

・最終的に援助を受ける側のGovernmentのみで実施できるようになるのか?援助に依存しないで自立を促すことができるプログラムなのか?

・CCTにおいてターゲットの選定、モニタリングなどが大変で費用もかかりそう

・どのくらいの期間援助を続けるのか?

 

Cash Transferは比較的新しい援助手法で、これからもっと活発になるだろうし、その成果や有効性がより明らかになってくると思います。もしかしたら課題のエッセイのテーマにこれを選ぶかもしれないので、勉強したら追記・修正していくかもしれません!

 

今後の更新予定として、Witchcraft(魔術、呪術)、HIV/AIDSとsex workerのことなど、授業で学んだこととマラウイのことを合わせて書けたらいいなと思っています!

 

Zikomo!!(マラウイのチェワ語で「ありがとう」)

 

参考・引用文献

Hanlon, J., Barrientos, A. and Hulme, D. (2010). Just Give Money To The Poor: The Developmental Revolution from the Global South. Kumarian Press, Sterling VA. Chapter 1.

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